NiKOブログ

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2010.09.22

むし歯菌が感染することに敏感になりすぎていませんか?

保育園の方からお電話でこんな相談を受けました。

ウチの園児で前歯がほとんど溶けているくらいひどいむし歯の子がいるんですけど、その子が使った笛や鍵盤ハーモニカの吹き口を回し舐めしたら他の子に菌がうつってむし歯になったりしませんか?


吹き口って使い回ししているのかな?とも思ったのですが、ふざけて他の子どものを舐めたりすることもあるとのこと。

最終的には次のようにお答えしました。

「回し舐めでむし歯菌が他のお子さんにうつる可能性はゼロではありませんが、仮にむし歯菌がうつったからといってスグにむし歯になるわけではないので、特に気にしなくても良いと思います。」

すると念を押すように、

「でもむし歯菌がうつる可能性はあるんですね?」

と聞かれました。

さて、この回答をもとにその保育園では今後どのような対応をすることになるのでしょう?

「衛生面を考えて吹き口は園児1人ひとりに専用の物を用意し、使った後は消毒するようにしましょう」

であれば良いのですが、

「むし歯の多い子(仮にA君としましょう)の使った吹き口を他の子が口にしないように注意しましょう」

となっては問題です。

残念ながら、電話でのやり取りから保育士さんは後者を意識しているように私には感じられました。

むし歯菌の感染?

むし歯は、むし歯菌が作り出す酸によって歯が溶かされることによって起きます。

まだ歯が生えていない赤ちゃんのお口の中にはむし歯菌は存在していません。

歯が生えたのちに他の人(主に母親)からむし歯菌が赤ちゃんにうつり、お口の中に定着します。

そのため育児書や歯医者さんからのアドバイスなどでは、

「赤ちゃんにむし歯菌がうつるの防ぐために、自分のお口で噛んだものを与えたり、お母さんが口にしたスプーンをそのまま赤ちゃんに使うのはやめましょう」

などとうたわれています。

でも、これをしっかりやるのはなかなか難しいんですよね。

私も長男が生まれたときにチャレンジしましたが、程なく断念しました。

むし歯菌の感染=むし歯の発生ではない!

「この子をむし歯にさせないために絶対むし歯菌はうつさない!」

それはそれで否定するつもりはありません。確かにむし歯菌がお口にいなければどんな生活をしていても少なくとも「むし歯には」なることはありませんから。

しかし「むし歯菌の感染」がそのまま「むし歯の発生」につながるわけではありません。

むし歯は、

  • むし歯菌の存在(数や活動性)
  • 歯の質
  • 食生活

の3つの要素が重なって初めて起こります。

つまり、お口の中にむし歯菌が存在していたとしても、フッ素で歯の質を強化したり、規則正しい食生活を実践したりすることで十分にむし歯を防ぐことは可能です。

また、「むし歯菌がいなければ歯みがきをしなくても大丈夫」と思っている方がいらっしゃるかもしれませんが、「むし歯菌がいない」イコール「お口が無菌状態」ではありません。

口臭がしたり歯肉炎や歯周病にはしっかりかかりますので、むし歯菌の有無にかかわらず口腔ケアは必要になります。

何かを犠牲にしてまでむし歯菌の感染を防ぐ必要はない

今まで述べてきた理由から、私は必要以上にむし歯菌の感染に対して気を遣う必要はないと考えています。

もちろん無理なくできるのであれば構いませんが、そのために親子の触れ合いや友達関係に支障が生じるのは好ましいことではありません。

冒頭のA君が保育園で不当な扱いを受けることがないよう切に願っています。