NiKOブログ

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2011.10.11

歯科受診を嫌がる子どもにかけてはいけない5つの言葉

当院は小児専門歯科医院ですので当然来院者のほとんどが子どもです。中には診察や治療を嫌がる子もたくさんいます。

嫌がって泣いたり、言うことを聞かない子どもにお母さん・お父さんが一生懸命言葉をかけることは珍しくないのですが、「あー、それは今言ってほしくないな~」と思うことも少なからずあります。

今回は歯科診療を円滑に進めるためにお子さんにかけてほしくない言葉をまとめてみました。

前提として

この言葉がなぜいけないのか?という理由はそれぞれの項目で延べますが、前提として次にあげることを心に留めておいていただければよいと思います。

  • 子どもに対してウソをつかない
  • 歯科に対するネガティブなイメージを植えつけない
  • 子どもを悪者にしない

ウソをついて行きたくない場所に連れてこられれば、当然お子さんは嫌な思いをします。

歯科医院が何をするところかまだよくわかっていないうちからお母さん・お父さんのネガティブな言葉を聞いているとまだ何も体験していないうちから「なんとなく嫌なことをされる」をいうイメージが先行してしまいます。少なくとも私たちは歯科医院が子どもたちにとって少しでも嫌な場所にならないように、逆にまた来たいと思ってもらえるように努力を重ねています。

せっかく頑張って嫌なことを克服しようとしているのにそれを認めてもらえないばかりか、逆に責められてはやる気もなくなってしまいます。

1.「何もしないから」(「診てもらうだけだから」)

歯科を受診して「何もしないで」帰るということはあり得ません(「何もできなかった」はあるかもしれませんが)。また、本当に「診るだけ」をご希望ですか?嫌がるわが子を歯科医院に連れてくるのにはそれなりに理由があるはずです。

「(今日はお口の中を診てもらうだけで、歯を削ったりといったことは)何もしないから」というニュアンスで言ったのかもしれません。でも子どもが言葉の行間を読んでくれるとは限りません。

  • 「何もしない」って言ったのにベッドに寝かされて口の中をのぞかれた
  • 「診るだけ(『見るだけ』ととらえているかもしれません)」って言ってたのに歯みがきされた

当の本人はこう感じるかもしれません。その結果、次からは「もう行きたくない。また言ったことと違うことされるんでしょ。」となるかもしれません。

「歯医者さんで何するの?」と子どもに聞かれたら、「まずお口の中を診てもらって、そのあとは何するのかな~。お母さんもわからないから先生に聞いてみようね。」などと適当にはぐらかすとよいでしょう。

2.「ちゃんとしないと注射してもらうよ」

診察室以外でも普段の生活で思わずこう言ってしまうことはありませんか?他には「言うこと聞かないと歯をガリガリ削ってもらうよ」とか。

麻酔の注射をするのも、歯をガリガリ削るのも治療上必要だからであって、決して子どもに罰を与えているわけではありません。

普段からの何気ない一言がお子さんに歯科に対する恐怖心を少しずつ植えつける可能性があることを知っていただきたいです。

3.「痛くないよ」

これは場合によりけりなので必ずしもすべてのケースで言ってはいけないとは思わないのですが・・・

これからされることのイメージができず不安になっている子どもを安心させようとして「大丈夫、痛くないから」と言ってしまうことがあります。

でも実はそこには「これからされることはちょっと痛くて嫌なことかもしれないけど、先生が痛くならないように上手にやってくれるから」というニュアンスが含まれています。

勘の鋭い子どもは「本当はこれから痛いことをされるんだ。お母さんは僕を安心させようとして『痛くないよ』って言っているんだ。」と自分なりに解釈してしまいます。結果として「いやだー!」となってしまうわけです。

普段の生活でも本当になんでもないことをするときにわざわざ「痛くないよ」とは言いませんよね?

また、すでに泣き叫んでいる子どもに「痛くないよ」と声をかけることは全く効果がありません。

4.「すぐに終わるから」

処置中大泣きしている子を落ち着かせようとしてかけがちなのがこの言葉。

あなたにとって「すぐに終わる」の「すぐ」はどのくらいですか?5分ですか?10分ですか?

お子さんにとっての「すぐ」は1分かもしれません。ひょっとしたらたったの5秒かもしれません。

「すぐに終わる」って言われたから5秒だけ頑張ったのに10分も我慢しなければいけなかった。嫌ですよね。いつまで耐えればいいのか「すぐ」だとわからないので不安が解消されません。

私たちが良く使う方法として、具体的な数字を挙げることがあります。

例えば「あと5つ数えたらうがいできるからね。い~ち、に~い、さ~ん・・・」という具合に。

(余談ですが、たまにこれを真似して自分で「い~ち、に~い」と数えだすお母さんがいます。さすがにそれはご勘弁願います)

5.「歯みがきちゃんとしないからだよ」

同じような言葉として「お菓子ばっかり食べているからだよ」などがあります。

まず、そのむし歯ができてしまったのはお子さんだけに責任があるのですか?

仮に百歩譲ってそうだったとしても、今まさに治療の不安や恐怖に耐えている子どもにこの場でかけなければいけない言葉ですか?

まとめ

お母さん・お父さんが嫌がる子どもにあれこれ声をかけるのは「なんとか歯医者に行ってもらいたい」「不安を取り除いてあげたい」といった思いからなのは間違いありません。

ただ、かける言葉によってはそれが意図しない効果を生んでしまうことがあるのも事実です。

お家では歯科医院は嫌なことをする場所ではなく、歯を良くしてくれる場所であることをやさしく伝えましょう。

診療室ではお子さんが泣いていてもあまり余計な言葉をかけず、手をつないであげるだけで十分です。

時間はかかるかもしれませんが、それを続けることできっと治療を上手に受けられるようになるでしょう。