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子どもがむし歯にならないために今から始める3つの方法
日本人の約90%以上が「むし歯」にかかっていると言われています。
軽くみられがちなむし歯ですが、気づかぬうちにどんどん進行することもある怖い病気です。
むし歯の治療には痛みが伴うというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、初期段階のむし歯であれば治療で歯を削らないことを知っていますか?
また、むし歯には効果的な予防方法があります。
今回は、子どもをもつ親が知っておきたいむし歯の基礎知識と予防方法についてご紹介します。
目次
1. むし歯はこうしてできる
子どもが歯科医院を訪れる理由の中で最も多いのが「むし歯」です。
むし歯は「むし歯の原因となる細菌が出す酸で歯の表面が溶け、歯に穴があく病気」です。
むし歯の原因菌として一番有名な細菌が「ミュータンス菌」です。
ミュータンス菌は、食べ物や飲み物に含まれる炭水化物や砂糖などの「糖」をもとに、歯に付着するネバネバの物質を作り出します。
それが塊になったものは歯垢(プラーク)と呼ばれ、そこにさらに糖が加わることにより、ミュータンス菌が糖を分解し、酸を作り出します。
酸が歯の表面のカルシウムやリンを溶かすことを脱灰(だっかい)といい、その状態が続くとやがて「むし歯」となります。
しかし、実際にはすぐ歯に穴があくわけではありません。
食事をした後は歯垢の中が強い酸性になりますが、唾液のはたらき(緩衝能)によって食後30分ほどで歯垢の中は中性になります。
そして、何も食べたり飲んだりしていない時間が続くことで、唾液に溶けた歯の成分であるカルシウムやリンなどが歯の表面に戻り、歯を修復します。これを再石灰化(さいせっかいか)といいます。
実は、食事の度にお口の中では「脱灰」と「再石灰化」が交互に行われています。
この二つのバランスが崩れ、脱灰が再石灰化のスピードを上回ってしまった場合に「むし歯」になるのです。
2. むし歯の本当の原因とは
むし歯には、以下の4つが関係しているといわれています。
- 歯の質
- 糖分
- むし歯の原因となる細菌
- 時間の経過
「甘いものの食べ過ぎ」や「歯みがきが不十分」などの要因だけでむし歯ができると思われがちですが、実は「糖だけ」「細菌だけ」でむし歯にはなるわけではありません。
「歯・糖・細菌」の3つの要素が重なる「時間」が増えれば増えるほど「むし歯になる」のです。
3. 削らないむし歯もある!症状ごとの治療方法
むし歯はむし歯でも、削らないむし歯があることをご存知ですか?
むし歯の進行状態にはいくつかの段階があり、それにより治療方法が異なります。
3-1. CO(初期むし歯)
[状態]
- 歯に穴はなく、表面がごく浅く溶けた状態
- 歯の表面の透明感がなくなり、白く濁ったり、段階によっては茶色になったりしている
- 痛みなどの自覚症状はない
[治療内容]
- 削らず経過観察
- むし歯の原因を突きとめ改善する
- 白いだけの状態であれば、再石灰化を促すことで健康な歯に戻すことが可能
- 茶色くなった場合は、それ以上進行させないように経過観察
3-2. C1(エナメル質のむし歯)
[状態]
- 歯の表面のエナメル質に小さな穴があいている
- 痛みなどの自覚症状はない
[治療内容]
- 経過観察の場合と最小限に削る場合がある
(進行しないと判断された場合でも、穴や変色などで見た目が気になるようであれば削る) - 削った場合は人工物を詰める(レジン充填)
3-3. C2(象牙質まで進行したむし歯)
[状態]
- むし歯が歯の内部に広がり、穴が象牙質まで進行した状態
- 痛みやしみる自覚症状がある
[治療内容]
- 象牙質近くでむし歯が横に広がっているため、大きく削る必要がある
- 削り取った歯の範囲や形によって、レジン充填や人工の被せ物(クラウン)などで歯の形を修正
3-4. C3(歯の神経まで進行したむし歯)
[状態]
- 歯髄(しずい)とよばれる歯の神経や血管のある組織までむし歯が進行した状態
- 進行具合によって激しい痛みを感じたり、痛みはなくても歯ぐきが腫れることがある
[治療内容]
- 歯の神経を取り除き、歯根を消毒するなど歯を残すための根管治療を行う
- レジン充填やクラウンによって歯の形を修正する
- 状態によっては抜歯することもある
3-5. C4(歯根だけ残ったむし歯)
[状態]
- 歯冠部(歯の上部)が崩壊し、歯根だけが残っている状態
- 痛みは感じないことが多い
[治療内容]
- 歯を残す治療は難しいため抜歯する
- 放置すると全身の健康を害する病巣となるため、歯根の先に溜まった膿の塊を取り除く
あくまで目安ですが、むし歯はこのように段階によって分かれています。
また、子どもは大人よりむし歯の進行が早く、乳歯のむし歯は永久歯に影響を与える可能性があるともいわれています。
特に、小さな子どもは自分では状態がきちんとわからなかったり、うまく説明できないこともあります。
大人と違って痛みを感じないまま、むし歯が進行してしまうケースも珍しくありません。
受診して初めて歯髄炎まで進行していることがわかることもあるため注意が必要です。
むし歯にならないための3つの方法
子どものむし歯について考えるうえで最も重要なことは、むし歯になりやすい環境を作らないことです。
むし歯ができたら治療するのはもちろんですが、むし歯が治ってもきちんと原因が改善されない場合は、再びむし歯になることも考えられます。
そのためには、正しいむし歯予防が必要です。
4-1. むし歯の原因を作らない
むし歯の原因となる「歯・糖・細菌」の3つの要素を意識しましょう。
歯の強化
- フッ素で歯を強化する(フッ素塗布、フッ素入り歯みがきジェルやスプレーの使用)
- 6歳臼歯など汚れがたまりやすい歯は溝を埋める(シーラント)
糖をコントロール
- 糖分を摂り過ぎないよう、お菓子やジュースなどの量をコントロールする
- 頻繁に食べ飲みしない
細菌を定着させない
- 唾液の作用を十分にするためにも、口呼吸にならないよう気をつける
- 幼児や小学校低学年の子どもの場合は、親が仕上げみがきをする
- 小学校高学年の場合は、自分でしっかりとみがけているかを親がチェックする
- 歯ブラシが届かない歯と歯の間には、デンタルフロスを使用する
4-2. 生活習慣や食生活を整える
お口の中だけに限らず、健康を維持するためにも以下のことに気をつけましょう。
- 規則正しい生活を送る
- 食事とおやつの時間を決め、メリハリのある食生活を心がける
- 唾液を分泌させるため、よく噛んで食べる
- 寝ている間は唾液の量が少なくなるため、寝る前には歯みがきをする
4-3. 歯科医院で定期健診を受ける
お子さんの定期健診についての記事はこちら
明らかに歯に穴があいていたり、色がはっきりと変色していれば、ご家庭でお子さんのむし歯に気づくかもしれません。
しかし、上の奥歯や歯の間のむし歯などはご家庭では気づきにくく、初期むし歯の中には見ただけではわかりにくいものもあります。
痛みなどの自覚症状がないまま、気づかぬうちにむし歯を進行させてしまわないためにも、歯科医院を定期的に受診することをオススメします。
まとめ
むし歯の原因は決して一つだけではなく、複合的な要素から作られていることをご理解いただけたかと思います。
他にも、子どもが歯科医院に来院する理由の一つに「歯のケガ」があります。
次回は「お口にケガをしたときの対処法」についてご紹介しますので、そちらも是非ご覧ください。