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障害を抱えたお子さんのお口の健康を守る訪問歯科診療
これまでにも当ブログで触れたことがありますが、ニコ小児歯科医院は昨年2016年から訪問診療を始めました。
訪問診療は、通院が困難な方のもとに医師が診療にお伺いし、計画的に治療や健康管理等を行うというものです。
現在は、高齢者対象が一般的ですが、当院では小児を対象とした訪問診療を行っています。
重症心身障害児(重症児)とよばれる重度の肢体不自由と知的障害とを併せ持つお子さんや、疾患によりご自宅で人工呼吸器を使用されているお子さんなどが主な対象です。
今回は当院での「訪問歯科診療」についてご紹介していきます。
目次
小児歯科で訪問診療を始めた理由
医療の発達とともに、在宅療養が必要なお子さんは年々増加傾向にあると言われていますが、十分なサポートやサービスなどの支援を受けられていないのが現状です。
子どもを対象とする歯科の訪問診療もその一つです。
平成26年の厚生労働省の患者調査によると、1年間に在宅歯科医療(訪問診療)を受けた患者およそ4万人のうち、0歳〜14歳の小児はたったの100人でした。
小児歯科の訪問診療は全国的にもまだまだ普及しておらず、札幌においても実施している歯科医院はごくわずかです。
そこで当院でも何かできることはないだろうかと考え、比較的予約の少ない曜日や時間帯であれば対応することができるのではないかと思ったのが、訪問診療を始めたきっかけです。
重症児に対する訪問歯科診療の必要性
重症児は、24時間休みなくご家族がご自宅でケアをしています。
また、外出が困難なため、歯科診療を定期的に受ける機会はほとんどなく、お子さんのお口の健康に関する悩みを誰に相談すれば良いかわからないご家族の方も多いと思います。
当院では、そんなお子さんやご家族のために、お口のケアやむし歯の治療など、基本的にお口の中でお困りのことは可能な限り解消していきたいと考えています。
お口のケア(口腔ケア)としては、お口の中を清潔に保つために、ご家庭でブラッシング(歯磨き)しきれない部分をスタッフがきれいにしたり、歯石の除去をすることもあります。
また、歯ブラシや補助清掃用具の選び方や使い方、ご家庭で注意することに関してもアドバイスを行っています。
特に、重症児は健常児と比べ、以下のトラブルなどについても注意が必要です。
- 経管栄養の場合は咀嚼をしないため、口腔内の自浄作用機能が低下する
- 口が常に開いて口内が乾燥してしまう口腔乾燥症(ドライマウス)等
- 口内が不潔になることによる誤嚥性肺炎や歯肉炎、むし歯のリスクの増加
- 筋の緊張により歯を強く食いしばることで歯や歯ぐきを傷つけてしまう
- 生え変わり時期の乳歯の誤嚥
中には命の危険を伴う場合もあり、十分に注意が必要です。
その他にも、うまく食べられないという悩みについて、食形態や食べさせ方をご家族と一緒に考えるなど、お口に関すること全般を可能な限りアドバイスいたします。
また、歯並びや顎の形が健常者と異なるケースもあるため、一人ひとりの障害の種類やお口の状態などに合わせたケアを定期的に行っていくことが大切です。
しかし、歯科医師でも障害をお持ちの方の診療に慣れていないと対応が難しい部分もあります。
当院には、障害をお持ちの方の診療経験が豊富な歯科医師とスタッフが在籍しておりますので、安心して受診いただけます。
訪問診療のお申し込みから診察までの流れ
次に、当院が実際に行っている訪問診療について説明いたします。
訪問診療の流れ
1.お申し込み
ご予約はお電話にて承ります。
その際、お子さんの障害やお口の状況、保護者の方が抱えているお悩みや心配事などをヒアリングいたします。
2.訪問日時の決定
ご希望に沿って訪問日と時間を決定いたします。
3.ご自宅に訪問
基本的には歯科医師とスタッフの2名が伺い、診療にあたります。
ご希望に合わせて、今後の処置や定期的なケアに関するプランを提案いたします。
確認事項
・詳しい障害の内容や日常生活の様子
人工呼吸器や気管切開の有無、起き上がれるか、食事方法(経口か経管栄養か)など
・診療内容
保護者の方が抱えているお悩みや希望される処置のご確認
訪問診療で可能な処置やケアついてのご説明
診療対象
疾患や障害などにより通院が困難な未成年の方
※成人を迎えられた方はご相談ください(高齢者の方の診療には対応しておりません)
対応可能地域
当院(札幌市北区拓北)より車で約30分以内に訪問可能な地域としておりますが、移動時間及び距離に関してはできる限り柔軟に対応いたしますので、まずはご相談ください。
※その際、駐車が可能な場所の有無をお伺いしております。
費用
歯科の訪問診療も健康保険や医療費助成が適用されます。
また、交通費や出張費などの料金はいただいておりません。
以上が基本的な流れとなりますが、お子さん一人ひとりによって障害の種類も症状もまったく異なります。
気になる点がございましたら、お気軽にご相談ください。
まとめ
歯科だけに限らず、重症児へのサポートはまだまだ不十分なため、通院などで外出するというだけで、本人もご家族も身体的ばかりか精神的にもとても大変です。
いざ病院を受診しようと予約をしても、病院に行くと長時間待たされて一日が終わってしまうこともあると思います。
また、重症児は障害の種類や症状によって抱えているお口の中のお悩みもさまざまなため、インターネットなどでお口の事に関して検索をしても、なかなか正確な情報を得られないということも多いでしょう。
当院では、訪問歯科診療を少しでも多くの方に知っていただき、日々ご自宅にてケアをされているご家族の方に寄り添い、お子さんのお口の健康に関するサポートをしていきたいと考えています。
どんなことでも結構ですので、まずはご相談ください。
今回は重症児の訪問診療についてお話させていただきましたが、次回は小さなお子さんをお持ちの保護者の方々からご質問の多い「何歳から歯医者に行ったらいいのか?」について、お話いたします。
そちらもぜひご覧ください。