「大人がキスをすると、子どもがむし歯になってしまう」というウワサを聞いたことはありませんか?

最近では、テレビやインターネットでさまざまな情報を得ることができるため、お父さんお母さんがお子さんのお口の健康について考える機会も多いのではないでしょうか。

しかし、中には伝わるうちに本来の意味が変わってしまうなど、真実とは異なるウワサもたくさん存在しています。

今回は、そんな「歯にまつわるウワサのウソ・ホント」についてお話しいたします。

目次

  1. むし歯菌はうつる?うつらない?ウワサの真相とは
  2. 「むし歯が親から子へ遺伝する」ってホント?
  3. 歯並びは遺伝するもの?しないもの?
  4. 「食後すぐに歯磨きしてはいけない」ってウソ?ホント?

むし歯菌はうつる?うつらない?ウワサの真相とは

「大人が使ったスプーンやお箸を使い回すことで、子どもがむし歯になる」というウワサを耳にしたことがある方も多いと思います。

結論から言うと、それだけでむし歯になることはありません

それでは、なぜ「むし歯になる」と言われているのでしょうか。

むし歯は、むし歯菌によって作られています。

しかし、生まれたての赤ちゃんのお口の中には、むし歯菌は存在しません。

ここで問題となるのは「いつ、どうやってむし歯菌がお子さんのお口の中に住みつくのか」です。

有名なものとして「一緒に暮らしているご家族から唾液を介して感染する」という説があります。

  • スキンシップなどでキスをする
  • スプーンやお箸を使い回す
  • 食べ物を冷ますためにフーフーと息を吹きかける

などの行為によって「むし歯菌は大人から子どもへうつるもの」という考え方です。

ところが、むし歯菌とは本来、赤ちゃん以外は誰しもお口の中に存在している菌です。

お子さんが成長する過程で、自然とお口の中にむし歯菌が住みつくようになるため、スプーンやお箸の使い回しなどを避け、十分に気をつけたところで、むし歯菌の侵入を完全に防ぐことは不可能なのです。

ここで、一般的なウイルスや細菌などによる感染症の流れをご説明します。

病原体が外から身体に侵入

体内に定着

増殖

発症

病原体の種類によっては感染がすぐに発症につながるものもありますが、むし歯菌は侵入したからといって、無条件でお口の中に住みつき、悪さをするわけではありません。

仮に、むし歯菌に感染したとしても、必ずしもむし歯になるとは限らないのです。

それでは、むし歯菌はいつどうやってむし歯を作るのでしょうか。

お口の中に侵入したむし歯菌が歯に住みつき、増殖するためには「糖分」が必要となります。

さらに糖分を元にむし歯菌は歯を溶かす酸を生み出し、むし歯を作るのです。

つまり、糖分をうまくコントロールすることができれば、むし歯を防ぐことが可能です。

例えば、

  • 生活習慣や食生活を整える
  • 糖分の量や摂取頻度を見直す
  • 長時間、菌や糖分が歯に付着したままにしないようお口を清潔に保つ

などが重要となります。

むし歯菌の侵入を防ぐことに一生懸命になるよりも、むし歯を作らせない努力をする方がずっと現実的な方法だと言えます。

何より、子どもにとってスキンシップは大切なものです。

「キスはダメ」「食べかけの物をあげないで」と細かな部分まで気にするあまり、スキンシップが不十分になったり、普段の生活やご家族間の関係に無理が生じてしまうのは悲しいですよね。

もし、大人からのむし歯菌の感染がどうしても気になる場合は「ご家族全員が普段からお口の中を清潔に保つ」ことをオススメします。

お子さんだけがむし歯にならないように気をつけるのではなく、一人ひとりがお口の健康を守ることがご家族みなさんの幸せや笑顔につながるのではないでしょうか。

「むし歯が親から子へ遺伝する」ってホント?

お子さんのむし歯を心配するお母さんから「私がむし歯になりやすいから、この子もむし歯になりやすいのかもしれない」という話をよく聞くことがあります。

確かに、親がむし歯になりやすい場合、子どももむし歯になりやすいという傾向があります。

しかし、それは同じような生活習慣や食生活を送っていることが要因である可能性が高く、遺伝であるとは一概に言い切れません。

仮に、お父さんやお母さんがむし歯になりやすいとしても、お子さんがむし歯にならないようにすることは可能です。

例えば、

  • だらだら食べる
  • 糖分が多い食生活
  • 生活時間が不規則

などの習慣がある場合は、まずそちらに気を付けるとよいでしょう。

また、「唾液の性質や分泌量が少ないことで、むし歯になりやすくなる」ということもあります。

唾液には、お口の中の酸を中和する緩衝能(かんしょうのう)という働きがあります。

その能力が低い場合や唾液自体が少ない場合はむし歯になりやすくなりますが、それが遺伝するものかどうかは今のところ明らかになっていません。

唾液の量についても、実は体質によるものではなく「口が開いているせいで唾液があまり分泌されず、口内が乾燥する」という場合もあります。

これも、生活習慣の改善によってある程度カバーすることが可能です。

歯並びは遺伝するもの?しないもの?

歯並びの遺伝」を心配される方もいらっしゃいます。

歯並びの遺伝については、親子でお顔の骨格が似るというケースはあり、例えばご家族に受け口の方がいる場合、お子さんも受け口になる可能性はあると思います。

ただし、幼少期の歯並びに関しては、授乳の際の姿勢やうつぶせ寝の有無、食べ方など成長過程による影響も大きいため、一概に遺伝するものだとは言いきれません。

「食後すぐに歯磨きしてはいけない」ってウソ?ホント?

「食後30分以内に歯磨きをすると、歯の表面のエナメル質を削ってしまう」というウワサを聞いたことはないでしょうか?

テレビなどで取り上げられて話題となったことがありますが、実はこれが「酸蝕症(さんしょくしょう)」という病気の話であることを知っていますか?

健康な人は食後すぐに歯を磨いてもエナメル質が削れることはありません。

お口の中を清潔に保つという意味では、むしろ食後すぐに歯を磨く方が好ましいと言えます。

それでは、なぜ「食後すぐに歯磨きしてはいけない」と言われるようになったのでしょうか。

実は、このウワサは情報が引用されるうちに、伝言ゲームのように大事な情報が抜け落ちた結果だと考えられています。

正しくは「酸蝕症で歯の象牙質が露出している人は、更に歯を削ってしまうリスクがあるため、酸性食品を摂取直後は歯を磨かない方が良い」です。

むし歯は「むし歯菌が出す酸で徐々に歯が溶かされるもの」ですが、酸蝕症は「酸によって直接歯が溶けてしまうもの」です。

酸蝕症が起こる可能性が高い原因として、一般的には酸性食品(黒酢などの酢や柑橘類)のとり過ぎや炭酸飲料の飲み過ぎ、繰り返し起こる嘔吐などがあげられます。

酸性食品は健康によいものと考え、頻繁に口にすることで歯がすり減ってしまうというご高齢の方が多くいらっしゃることも事実です。

酸蝕症が見られる場合には、黒酢を飲んだ直後や柑橘類を食べた直後の歯磨きは避け、時間を置くか、口をゆすぐなど、できるだけ酸蝕症の進行を防ぐことをオススメします。

まとめ

意外と知っているようで知らない「歯にまつわるウワサ」いかがでしたか?

今回ご紹介した以外にもまだまだウワサはたくさんあります。

少しでも気になる情報がありましたら、ぜひ歯科医に直接尋ねてみてください。

真偽が不確かな情報に惑わされるよりも、歯科医院でお口の状態を定期的に確認する方が安心につながると思います。

次回は、そんなお口の健康を維持するための「定期健診」についてご紹介しますので、そちらもよろしければご覧ください。